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大魔王シャザーンと広瀬健次郎とアラビアーン!

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ムネです。たまにはこんなネタはいかが?

今や50代以上の人しか覚えていないでしょうけど、日本で放映されていた海外アニメーション番組に「大魔王シャザーン」というのがありました。
大魔王シャザーン
(大魔王シャザーン。かつての笑点の座布団の人に似ていると思う)

ちょうど50年前の1968年1月12日、NETテレビ(現テレビ朝日)系列で放映開始された作品です。
制作はアメリカのハンナ・バーベラ・プロダクション。「スーパースリー」や「チキチキマシン猛レース」で有名な制作プロダクションです。

(「スーパースリー」。時代はサイケデリック....ラリホー!)

「シャザーン」はこの二作品の間に作られた作品でした。日本では金曜日の夜19時30分枠というゴールデンタイムに放映されていたのです。
まだまだ日本のアニメーションは黎明期で、ゴールデンタイムでも海外アニメーションに頼らざるを得なかった時代だったんですね。

さすがに1968年当時、私は幼児でしたからリアルタイムでは「シャザーン」を覚えていません。
1970年代の中ごろに東京12チャンネル(現在のテレビ東京)で再放送していたのをうっすらと覚えているぐらいです。
主人公の男女が窮地に追い込まれると二人の指輪をあわせて「出てこいシャザーン!」と叫ぶ。すると「はいご主人様」とか言ってシャザーンが登場し、悪人を退治するという話でした。

細かい事情は割愛しますが、1960年代当時、こうした「洋物番組」の主題歌を、そのまま日本のテレビでオンエアするのは稀でした。
勝手に原曲に日本語歌詞の「唄」をかぶせてしまう...なんていうのはまだいい方でして、日本独自の主題歌を作ってまるごと差し替えてしまうというのが日常茶飯事でした。

たとえば「大魔王シャザーン」の英語版オリジナル主題歌はこういう曲です。

(Hoyt Curtin – Shazzan – 1967)
スィングジャズにアラビア風の音階(オリエンタル・スケ-ル※1)が絡むというユニーク作品ですね。
しかし、これよりも31年前に、ベニー・グッドマンが「素敵なあなた(Bei Mir Bistu Shein)」という曲でこれと同じことをやっています。

これはこれで面白いのでしょうけど、日本人の子供には受けない事は目に見えていますね。
アメリカならノリ重視だけでもいいのかもしれませんが、日本は「言霊」を重視する国なんです(おっと話が飛躍しそうだ)、親しみやすい歌詞がついた主題歌は必要なんです。
そこで、日本独自の主題歌が作られました。

「大魔王シャザーン」の日本版主題歌はこうです。

(「大魔王シャザーン」日本語TV版主題歌フルサイズ by 東芝児童合唱団 – 1968)

いやぁ~かっこいいです。ヘヴィなドライブ感がたまりません。
私なんぞはこのノリは「アニソン」というよりは「ロック」だと思っていますし、そう考えた方が色々と面白いです。

イントロのオルガン(当時は珍しかったVOXの電子オルガンでしょうか?)は神秘的な雰囲気をかもしだしています。そこにブラスセクション(金管楽器)がかぶさってきます。

最初期のブラス・ロックの名盤といえばブラッド・スウェット&ティアーズの「子供は人類の父である(Child Is Father To The Man)」が有名ですが、これがリリースされたのが1968年の2月21日ですから「シャザーン」の方が一か月早い(笑)。
ついでに申せばブラス・ロックの代表的バンドであるシカゴのデビューよりも2年早いんです。

乗っかってくるアラビア風の旋律も素敵ですね。この旋律がリピートされる間奏のダイナミックさに至っては、その迫力において当時流行だったGS(グループ・サウンズ)の音をはるかに凌駕していると思います。

歌詞もいいですね。
「へんへんへんてこりんな怪物を、とんとんとんころりんと退治する、オホホ~、オホホホホ~、千人力が痛烈、ぼくらのシャザーン強烈」。
ふざけんな、って思います(笑)

作詞は本田カズオ。
実はこの人、謎なんです。著作権データベースをみても「シャザーン」がらみの曲の作詞しかしていない。おそらくプロの作詞家ではなかったのでしょう。
日本語版制作のスタッフとか、通りすがりの人とか.....ヘタすると曲が先にできて歌詞が後なんてこともある。
昔の音楽って、とにかく適当。だからこんな大胆な歌詞ができたのかもしれません。

これ、オリジナル主題歌のおいしい所だけ奪って、オリジナルを超えた名曲になっていると思います。

作曲は広瀬(廣瀬)健次郎。あまり知名度は高くありませんが、1960年代初めから映画のサウンドトラックで活躍していた人です。

私は日本のカルト映画のサウンドトラックを集大成した「GO!CINEMANIA REEL」というコンピレーションで彼の事を知ったのですが、ハードボイルド系のサントラで実にクールな音を生み出している作曲家です。

「写真記者物語 瞬間に命を賭けろ(東宝)」「国際秘密警察 火薬の樽(東宝)」「暗黒街全滅作戦(東宝)」「女番長(すけばん)タイマン勝負(東映)」などを聞く(見る)機会があったらぜひその「音」を聞いてみて下さい。ちょっと日本人離れしたセンスの持ち主だと思います。もっと評価されてもいいんじゃないかと思っています。

(国際秘密警察 – 火薬の樽 – 1964年12月9日封切)

その廣瀬健次郎、アニソンの仕事は珍しい方ですが、実はこんな有名な曲も手掛けています。

(オバケのQ太郎 1966年版)

さて、1968年当時...実際には66年から67年にかけてですが、英米のロック・シーンで「ラーガ・ロック」というのが流行りました。
「ラーガ・ロック」とはインドの音階、あるいはシタールといったインドの民族楽器を取り入れたロックです。リアルタイムでこういう呼び名があったかどうかはわかりませんが、ビートルズのジョージ・ハリスンがシタールにハマったのもこの時期ですし、これらの曲も有名なものです。

(The Kinks – See My Friends – 1965 – ラーガ系の先鞭を切った作品)

(The Rolling Stones – Paint It Black – 1966)

じゃあインド風ではなく、アラビア風ロックというのがあったのか?と考えてみると、これがあるようで見当たらないんですよ。
もちろん私の無知もあるのかもしれませんが....私が知っている限り、1966年代のロック・シーン(?)では「シャザーン」とThe Whoのこの曲しか見つかりませんでした。
(70年代になるとQueenが「Mustapha」という曲をやっていますが「アラビア」か「ヘブライ」かでもめたら怖いのであくまで参考まで)

(The Who – Disguises – 1966)
ひねくれ者のピート・タウンゼントの作品です。「世間がインドならば、俺はアラビアで行こう!」ぐらい考える人。

アニソンは決して詳しい方ではありませんが、手堅く売って行こうという音楽業界の中で、自由度が高くて一番大胆な事をやってくれるジャンルのひとつではないかと思うんです。そうでなきゃ「シャザーン」のようなチャレンジ精神に富んだ「隠れ名曲(?)」は生まれてこないと思うのです。

※1 オリエンタル・スケールを試してみたい方は、
C/D/E♭/F#/G/A♭/B
を弾いてみて下さいね。


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