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ボブディラン、ノーベル文学賞受賞されたので作詞方法の小話をひとつ

2016年10月13日、スウェーデン・アカデミーが決める今年のノーベル文学賞。
米国のミュージシャンで作詞家のボブ・ディラン(75)に決まりましたね。

当日の夜、レッスンにいらした生徒さんが興奮冷めやらぬ調子で「ねぇ聞いた?!」とまだ一報を知らずにいた私に教えてくれました。
その興奮がそのまま移り私も「ええ~!!」と叫びました(笑)日本のあの方への期待も(毎年)上がる中、少し残念な気もしましたが「作詞家」としての素晴らしさを宗さんとから語り聞いていたので「やったじゃん!」という思いも直ぐに沸き上がりました。今回の受賞は賛否あるようですが、音楽を志す人にとっては希望になるのではないでしょうか。

今となっては今年の来日ライブ行けばよかったかな(笑)

以前、作詞家の先生に「外国の詩を参考にした日本語詩の好例」を教えて頂いたことがあって、その時に登場した詩がボブ・ディランが「Boots Of Spanish Leather(スペイン革のブーツ)」(1964年)でした。対する日本語詩は何かというと太田裕美の「木綿のハンカチーフ」(1975年)。

hitomi

どちらの曲の歌詞も恋人同士の手紙のやり取りでストーリーが進みます。
「スペイン革のブーツ」では主人公は男性。
主人公の恋人が船で旅立つところから始まります。
彼女に

「Just carry yourself back to me unspoiled, From across that lonesome ocean.(その淋しい大海原を越えて、ただただ汚されずに帰ってきてね)」

と話す主人公。切ない。

彼女は旅先からの手紙の中で「金や銀のアクセサリーがいいかしら、、」
と”都会”な、贈り物を送ろうとします。
でも主人公は切ない予感を故郷から馳せているんですね。

「oh,but if I had the stars from darkest night And the diamonds from the deepest ocean,I’d forsake them all for your sweet kiss,For that’s all I’m wishin’ to be ownin’(真っ黒な夜からとった星と深い海からとったダイアモンドだっていらないんだ君のsweet kiss があれば 僕が欲しいのはそれだけだよ)」

と手紙で彼女の心に、帰ってきてーー!!と話しています。うーん切ない。

そして曲の後半は、皆さんが恐れていたことが。

「I don’t know when I’ll be comin’back again, It depends on how I’m a-feelin’
(いつ帰れるか分からないわ、、、気分になったら帰るわ、、、)」

と彼女がついに冷たいお返事を!!!泣。
彼女の心変わりと共に恋が終わりを告げています。
そして最後は、彼からのメッセージ

「And yes, there’s something you can send back to me,
Spanish boots of Spanish leather.
(そうだね、何か送ってくれるんならスペイン革のブーツを)」

でこの歌が終わります。

対して太田裕美「木綿のハンカチ―フ」ではというと、皆さんご存知だと思いますが
「スペイン革のブーツ」同様、手紙のやりとりで詞が進みます。違うのは旅立つのは男性で、帰りを待つ主人公が女性という事。
彼女は彼に「ただ都会の絵の具に染まらないで帰って」と見送ります。
都会に出てしばらくした彼は「都会で流行りの指輪を送るよ」と話しますが彼女は
「いいえ 星のダイヤも海に眠る真珠も きっと あなたのキスほど きらめくはずないもの」と彼に会いたい思いを綴っています。うーん切ない。

そしてそして皆さん恐れていたことが。
彼が「毎日愉快に過ごす街角 ぼくは ぼくは帰れない」と!!泣。
別れのメッセージを受けた彼女は曲の最後で伝えます。
「あなた 最後のわがまま 贈りものをねだるわ
ねえ 涙拭く木綿のハンカチ―フください 木綿のハンカチ―フください」

この日本で「木綿のハンカチーフ」が発表されたのは1975年。国と時代のシチュエーションに主人公や詩の中のアイテムなどをうまく変えて多くのその国の人に愛される楽曲を生み出したんですね。因みに「木綿のハンカチーフ」作詞を手掛けられた松本隆さんご自身がボブディランのこの曲から“着想を得た”と認めてらっしゃいます。

作詞に取り組んでいる方はそんな“ヒント”を探しに色々な作品を聞いてみたり、外国語の詞を訳してみたりするといいのではないでしょうか。
そしてそれは歌う時も一緒ですね!
それぞれの立場の心情を知って歌うのと、外国語詞をただ「読み歌う」のとでは表現がずいぶん違ってくると思います。

10月19日現在、スウェーデン・アカデミーはボブディランへ直接の受賞連絡を断念したと報じられています。12月10日の授賞式に彼は出席されるんでしょうか?
どちらにしてもおめでとうございます!!

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