ミューズポートスタッフのたわごと

こんにちは、ボスのムネです。

さてインストラクターのノリちゃん(高橋の方)が言った言葉に「おばあちゃんになっても歌い続けたい」というのがあります。
大変素敵な言葉だと思っています。

歌手とかシンガーさんに限らず、誰にも人生のある部分に「歌」というものがあると思います。
小学校の授業で習った「歌」、テレビで流れていた「歌」、中学生でハマった「歌」。

明治生まれの私の義祖母は99歳で亡くなったのですが、亡くなる3か月前、上機嫌で文部省唱歌の「茶摘み」を歌っていたのが今でも印象に残っています。
私も最後は鼻歌でもいいから、自分の好きな歌を歌って死にたいものです。

私どもがレッスンをしていて思うのは「40歳の壁」というものです。
どうも人間というものは、40歳あたりになってくると、どうしても高い声が出にくくなってくる。
「今まで普通に歌えた歌が、歌えなくなってきたんです」と言って通いに来られる生徒さんの多いこと、多いこと。

そこをボイストレーニングで克服することで、「歌」と寄り添った人生をさらに長いものにする。
こうして壁を越えて行く事は、とても素敵なことだと思います。

さて、話を戻しましょう。

今回は「おばあちゃん(おじいちゃん)になっても」歌い続けた素敵な方々をご紹介します。

【アニタ・オデイ(Anita O’day)1919-2006】


アメリカの有名な女性ジャズシンガーですね。ハスキーヴォイス、そして個性的で「アバズレ」なボーカルが魅力的です。
彼女のデビューは1941年(昭和16年)、ジーン・クルーパ楽団の専属歌手として「Let Me Off Uptown」でデビューしました。レコーディングは1941年5月8日ですから太平洋戦争のちょうど半年前ですね。
当時の彼女の映像がこちらです。

(「Let Me Off Uptown」。当時、視聴できるジュークボックス「サウンディーズ」用に撮影されたもの)
そんな彼女は亡くなる前年までレコーディングを行い、2006年4月18日に「Indestructible!(不滅!みたいな意味でしょうか)」というアルバムをリリース、そして10月18日に亡くなりました。
アルバムリリース時、彼女は86歳、芸歴は65年でした。

私は彼女の晩年に作られたドキュメンタリーDVDを持っているのですが「サバサバしたおばあちゃんアニタ」がジャズを歌う様は実にカッコ良いですよ。
そうそう、彼女の映像といえば、これを忘れてはいけません。1958年の「ニューポートジャズ・フェスティバル」の出演した時のアニタです。

もう何ていうのか、カッコいい!
この年のニューポート・ジャズ・フェスは、ちょうどジャズとロックの過渡期だったこともあって、後で紹介するロックン・ロールのチャック・ベリーも出演しています。

【ペトゥラ・クラーク(Petula Clark)1932-】


ペトゥラはイギリス出身の歌手。
彼女は1942年(昭和17年)10月、英国BBCのラジオ放送でデビューしたのですが、放送中に空襲警報が発令されました。そんな中で9歳だった彼女は歌い続け、国民から人気を獲得したのです。
レコードデビューは1946年(昭和21年)6月の「Put Your Shoes On Lucy」。この時ですら、彼女はまだ13歳でした。

(Petula Clark – Put Your Shoes On Lucy – 1946 – 動画では1949年となっていますが、これは間違い)
彼女の最大のヒット曲は1964年にリリースされた「恋のダウンタウン(Down Town)」。
映画「17歳のカルテ」でも印象的に使われたこの曲、耳にされた方も多いのではないでしょうか。

(Petula Clark – Down Town – 1965)
そんな彼女は昨年(2016年9月13日)、デビュー70周年を記念してニューアルバム「From Now On」をリリースしました。
芸歴74年、84歳のペトゥラのアルバムは、本当にオーソドックスなポップミュージックに彩られた好盤です。Beatlesの「Blackbird」などもカバーしています。

(Petula Clark – Sacrifice My Heart – 2016)

【チャック・ベリー(Chuck Berry)1926-2017】

アニタ・オディと同様に1958年のニューポート・ジャズ・フェスイティバルにも出演したチャック・ベリー。
ロックミュージックのオリジネーターの一人でもあるこの人、残念ながら今年の3月18日に亡くなってしまいました。享年90歳。
彼は1955年7月に「メイベリン(Maybellene)」でチェス・レコードからデビューしています。

(Chuck Berry – Meyvellene – 1955)
そして90歳記念のアルバムをリリースするという告知が公式サイトでされたのは昨年の10月ぐらいの事でした。
「90歳のロックか。それは凄い!」と、公式サイトからわざわざメーリングリストに登録して、発売の案内を待っていたのですが、待てど暮らせどそれがこない中での訃報でした。
レコーディングはかなり進行していたのでしょう。3月21日に新曲「Big Boys」がYoutubeで公開されました。

(Chuck Berry – Big Boys – 2017)
「うわあ、相変わらずのロケンロールだ!」と思いつつ、90歳のロックを聞いています。なお、延期になっていたニューアルバム「Chuck」は6月16日にリリースされる予定。
もうこの年齢になってしまうと、音楽性とかクオリティとか関係ありませんね。人類最高齢のロックのアルバム。興味津々です。

私が彼の来日公演に行ったのは1981年、高校一年生の時でした。
前年にJohn Lennonが暗殺された事もあったし、当時55歳のロック・ミュージシャンなんてありえない年齢でした。
「いつ亡くなるかわからない。もう二度と見ることはできないだろう」。そんな気持ちで行ったのを覚えています。

あれから36年、のけぞるレベルで私の予想は外れたわけです。

【ヴェラ・リン(Vera Lynn)1917-】


「歌い続けている」という意味では番外編となりますが、この人の事も忘れてはいけません。
第二次世界大戦中、世界中(主に連合国側)で愛された曲に「また逢いましょう(We’ll Meet Again)」があります。

(Vera Lynn – We’ll Meet Again – 1939)
ヴェラ・リンがこの曲をレコーディングしたのは1939年9月28日のこと。
9月1日にドイツがポーランドに侵攻し、3日にイギリスはドイツに対して宣戦布告したその直後にレコーディングされたわけです。
「また逢いましょう、どこなのかいつの事なのかはわからないけど、ある晴れた日に」という歌詞には、戦意高揚の言葉などひとつもありませんが、愛する家族や恋人や伴侶や親戚を戦地に送り出した人々を心を代弁して大ヒットとなったわけです。

(Vera Lynn – We’ll Meet Again – 1953 こちらのバージョンは映画「博士の異常な愛情」のエンディングで印象的に使われてた)

戦時中、彼女は戦地を回り兵隊たちを慰問し続けました。1944年には日本軍との激戦が続くビルマにまで慰問に訪れています。

「イギリス軍の恋人(Forces’ sweetheart)」これが彼女に付けられた愛称でした。

イギリスでは今もなお第二次世界大戦の時代を象徴する歌手として、イギリスの精神を象徴した歌手として敬愛されて続けています。

(1975年、ビング・クロスビーとカーペンターズの「Sing」をデュエットするヴェラ)
2009年8月にリリースされた彼女のベスト・アルバム「We’ll Meet Again: The Very Best of Vera Lynn」はイギリスのアルバムチャートで1位を記録しました。
1位を獲得した現存最高齢(当時92歳)の記録は、現在も破られていません。

(1995年、戦勝50周年記念式典で「ドーバーの白い崖」「We’ll Meet Again」を歌う78歳のヴェラ)

そして今年2017年3月17日、彼女の100歳を記念したアルバムがリリースされました。その名も「Vera Lynn 100」。

現存歌手の100歳を記念したトリビュート&ベストアルバムです。

(Vera Lynn – 100 – Official Album Trailer -2017)
さすがに100歳の彼女が新たにレコーディングするということはできませんでしたが、彼女の1950年代以降のボーカルトラックに新たにオーケストラやデュエットボーカルを加えた豪華な内容となっています。未発表テイクを使用した「Sailing」も、彼女の人生を象徴しているようで素敵ですね。

(Vera Lynn – Sailing – 2017)
イギリスのアルバムチャートで3位を記録し、残念ながら自己記録の更新には至りませんでしたが、Youtubeで「Vera Lynn 100」で検索すると、イギリスのあちこちで彼女の100歳を祝うパーティーが開催されたことがわかり、未だに彼女がある時代の象徴として、精神的支柱として愛されていることがよくわかります。

【最後に】
「番外編」という意味では、来年100歳を迎える歌手の平井英子(1918-)さんは童謡歌手として1927年にデビューしていますから、上のどの方よりも音楽デビューは早い事になります。
平井英子といえば2000年代にサブカル界で脚光を浴びた「茶目子の一日」や、岸井明との「タバコやの娘」が有名ですが、戦前に引退しており、現在は「横浜で現存しているらしい」という情報しかありません。
それとテレビタレントの中村メイコさん(1934-)は、1937年に映画デビューし、1940年にはエノケンこと榎本健一と「メイコちゃんと・鍈坊の閻魔大王訪問記」というレコードを出しています。この音源はぐらもくらぶからリリースされている「芸能宝船・歌は戦線へ」というCDで聞くことができます。
メイコさんは日本では音楽キャリア、映画キャリアともに「現役最年長タレント」と言えるのかもしれません。


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